「アドラー流の子育ては、ほめない・叱らないと聞いたけれど、結局どう声をかければいいの?」。本を読んでも、目の前で子どもが物を投げたり、きょうだいをたたいたりすると迷いますよね。
大事なのは、何があっても黙って見守ることではありません。危険な行動はその場で止め、その後に、人格を責めずに起きたことと次の行動を話す。まずはこの形だけ覚えておくと実践しやすくなります。
最初に知っておきたいこと
アドラー心理学の考え方は、子どもとの関わりを見直す一つの枠組みです。使えば必ず子どもが言うことを聞く、問題がなくなるという方法ではありません。年齢や発達、その日の体調に合わせて、言葉を短くしたり手伝ったりして構いません。
アドラー流子育ては「叱らない=放置」ではない
アドラー心理学をもとにした親子関係の学びでは、「ほめる・叱る」よりも、対等な相手として協力し、子どもが自分で考えて動く力を支える「勇気づけ」が重視されます。ただし、対等とは親子の役割が同じという意味ではありません。安全を守り、必要な境界を示すのは大人の役割です。
日本アドラー心理学会のFAQでも、行動の背景を理解しようとする一方、けがなどの緊急性がある場面では即座に対応することが示されています。道路への飛び出し、熱い物への接触、人をたたく行為は、長い説明より先に止めます。
止めることと、感情的に叱ることは別なんですね。でも、とっさに優しい言い方が出てきません。
優しく完璧に言おうとしなくて大丈夫です。危険な場面なら「止まって」「たたかない。痛いよ」のように短く伝えます。落ち着いてから、起きたことと次にどうするかを一緒に考えれば十分です。
迷ったときは「事実・影響・次」の3つで話す
長いお説教になりそうなときは、次の順番に戻します。
- 事実:評価を入れず、見えたことを短く言う
- 影響:困っていること、安全上の理由、自分の気持ちを伝える
- 次:どうするかを尋ねるか、選べる案を示す
たとえば「また散らかして、だらしないね」ではなく、「床にブロックが残っているね。踏むと痛いから、箱に戻すのと私と一緒に集めるの、どちらにする?」とします。年齢が低い子には、質問だけで任せず大人が手を動かしながら伝えます。
アドラー流子育ての声かけ5例
| 場面 | 責める言い方 | 言い換え例 |
|---|---|---|
| 飲み物をこぼした | 何回言ったら分かるの | こぼれたね。布巾を持ってくる?一緒に拭こうか |
| きょうだいをたたいた | 悪い子! | たたかない。痛いよ。離れてから何が嫌だったか教えて |
| 片づけない | 早く片づけなさい | あと5分でごはんだよ。車とブロック、どちらから戻す? |
| 新しいことに挑戦した | すごい、天才! | 何度もやり直していたね。どこを工夫したの? |
| 親に余裕がない | いい加減にして! | 今は落ち着いて話せない。安全な場所で少し待ってね |
言い換え例は正解の台詞ではありません。子どもが泣いているときや興奮しているときは、言葉を増やすほど届きにくいこともあります。まず安全を確保し、落ち着いてから話します。
1.こぼしたときは、失敗より後始末へ目を向ける
「だから言ったでしょ」と責めても、こぼれた飲み物は元に戻りません。布巾の場所を教えたり、一緒に拭いたりして、次にできる行動へつなげます。わざとではない失敗と、繰り返し危険な遊びをする場面も分けて考えます。
2.人を傷つける行動は、短い言葉で止める
たたいた手を安全な範囲で止め、子ども同士を離します。ここで「気持ちを分かってあげなければ」と理由を聞き続ける必要はありません。相手のけがを確認し、双方が落ち着いた後で「おもちゃを取られて嫌だったんだね。たたく代わりに何と言おうか」と話します。
3.片づけは、命令を繰り返す前に範囲を小さくする
部屋全部を見せて「片づけて」では、子どもがどこから始めるか分からない場合があります。「赤い車をこの箱へ」「まず5個だけ」のように小さくします。選択肢を出すときは、どちらを選ばれても大人が受け入れられる二つにします。
4.ほめる代わりに、見ていた事実と関心を伝える
ほめること自体を悪いものとして恐れる必要はありません。ただ、結果だけを「えらい」「すごい」で終えるより、「昨日より長く練習していたね」「自分ではどこが気に入っている?」と伝えると、親の評価だけでなく本人の感覚にも話を広げられます。
5.親が限界なら、その場を安全に中断する
怒鳴りそうなときに、理想の声かけを探すのは難しいものです。子どもを安全な場所へ移し、「今は怒っているから、2分待って」と短く伝えます。深呼吸、水を飲む、別の大人に代わるなど、先に親の状態を整えます。乳幼児を一人で危険な場所へ残さないことは大前提です。
毎回うまく言えなくても、落ち着いた後に「さっきは大きな声になったね」と話し直せます。
私が実践して分かった「完璧に叱らない」は難しい
ここからは、このブログ管理人が子どもが小さかった頃に試した体験です。専門家としての指導ではなく、一家庭の記録として読んでください。
私は、子どもが1歳頃からアドラー心理学の子育てを意識しました。最初は「一度も叱らないようにしよう」と力が入りましたが、実際の生活では思いどおりにいきません。疲れていれば感情的になる日もありましたし、後から言い過ぎたと気づくこともありました。
それでも役立ったのは、子どもを変える技術としてではなく、まず自分に「今日はよくやった」「うまくいかなかったら次に直せばいい」と声をかける考え方でした。自分を責め続けるより、少し落ち着いて子どもと話し直しやすくなったからです。後には夫への声かけでも、欠点を指摘する前に助かったことを言葉にするよう意識しました。
わが家では、アドラー流を完璧に守れたわけではありません。それでも「人格ではなく行動を見る」「失敗した後に次を考える」という二点は、今でも使いやすいと感じています。
取り入れやすい点と注意したい点
取り入れやすいのは、失敗の直後でも「次に何をするか」へ話を戻せることです。親が感情的になった後も、関係を終わりにせず話し直せます。一方で、どの場面でも質問で考えさせようとすると、子どもにも親にも負担になります。急ぐときは大人が決め、疲れている日は手伝うなど、状況に合わせます。
また、「叱らない」を優先しすぎて危険を止められない、困っている相手の気持ちが後回しになるなら、方法を守ることが目的になっています。安全確保と被害を受けた人のケアを先にし、その後で背景や次の行動を考えます。
うまくいかないときに見直す3点
- 言葉が長すぎないか:興奮中は一文で止め、説明は後にする
- できる範囲になっているか:年齢に合わせ、選択肢や作業を小さくする
- 親が一人で抱えていないか:睡眠不足や強い疲れが続くなら、家族や相談先を頼る
家の中の危険を減らしておくと、注意の回数そのものを減らせます。赤ちゃんが動き始めた家庭は「ハイハイ期のリビング安全対策」と「ベビーサークルが必要な家・いらない家」も確認してみてください。
また、産後に怒りや落ち込みが強い、子どもを傷つけそうで怖いと感じる場合は、声かけだけで解決しようとせず、自治体の相談窓口、医療機関、身近な人へ早めに相談してください。
今日から一つだけ変えるなら
アドラー流子育てを始めるために、難しい理論をすべて覚える必要はありません。まずは、子どもの人格を評価する言葉を一つ減らし、見えた事実を一つ伝えます。
「だらしない」ではなく「床におもちゃがある」、「悪い子」ではなく「たたくと痛い」。危険は止め、落ち着いたら次を一緒に考える。この小さな繰り返しなら、今日の生活にも取り入れられます。
参考:日本アドラー心理学会「不適切な行動」、同「家庭への応用」(2026年8月3日確認)
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